最も人気のなかった米国の大統領―ジミー・カーター氏

 最も人気のない米国の大統領は、第39代大統領ジミー・カーター氏(任期:1977〜81年)だという。彼の任期中、米国経済は極度のインフレで、更に、軍の使用については慎重な姿勢を貫いたため、強いイメージを好む国民の支持率が低下、再選に際して鷹派のレーガン候補に惨敗した。しかし、クリスチャンのカーター氏が本領発揮するのは、大統領を辞めてからである。
 1980年、大統領再選に敗れたカーター氏と夫人は、新しい事業に乗り出す決心をする。それは、大統領図書館を公的記録のための単なる倉庫ではなく、国際的な平和維持組織、カーター・センターにするというものである(退任した大統領は、政権時代の資料を政府に提供し、それを収蔵する図書館が建てられることが法で定められている)。カーター氏は、世界の各地で起きている紛争を解決するために、政府の許可を得て、民間レベルで独裁者や侵略戦争の責任者などと交渉する道を作ったのだ。そのために、自分の知識と経験、そして信仰を生かそうというものである。その一つの成果が、1994年の北朝鮮との戦争の回避であった。
 カーター氏は米国アナポリス海軍兵学校を卒業後、原子力潜水艦の乗組員となる。父親が他界したため、家業のピーナッツ農場を継ぐために海軍を退役、その後、州知事から大統領になった。海軍兵学校時代から、教会学校で聖書を教えてきたカーターは、大統領になってからも礼拝に出席し、年に数回は大人のバイブル・クラスを担当できるようスケジュールを組んでもらっていたという。カーター氏は、海軍と信仰について、こう記している。「海軍での任務は敬虔な信仰と最も近い関係にあると思う。任務の遂行にあたり、私たちは、服従、知識、闘争心、信頼性、忠誠心、自発性、自制心、活気、勇気、公平さ、自信、名誉心、明朗さを発揮することを期待されたのである。しかし何よりも重要な基準は真理---絶対の真理--であり、…いかなる形であれ虚偽と不正直は、米国海軍兵学校から直ちに放逐される正当な理由であった」と。(ヨハネ14:6 イエスは彼に言われた、「わたしは道であり、真理であり、命である。」)真理を愛するカーター氏は、米国が、その機会があった時でさえ平和を選択せず、何かと戦争に関与してきたことを非難する。特に、イラク戦争を侵略だと、ブッシュ政権に反対してきた。平和、正義、自由、民主主義、人権、環境保護、肉体的苦痛の軽減などを目標としたカーター・センターは、数々の慈善財団の支援を受け、現在も、カーター夫妻が中心となって活動を続けている。その功績から2002年、ノーベル平和賞を受賞したカーター元大統領は、現在もジョージア州の教会の役員を務め、バイブル・クラスで毎週聖書を教えている。彼は、「キリストは私にとって、人格的な救い主であり、神に至る道であり、模範であり、水先案内人であり、新たな確信の源であり、力と知恵を意味しています。神様が私をアメリカの大統領に当選させたのは、大統領の任期後、私にさせることがあったからです」と語る。
 人生で挫折を体験したならば、それは神が使命を与えようとしておられるときなのだ。苦難に直面したときこそ、心を神に向け、魂を聖霊で満たしていただき、御声を聞くようにしよう。パウロは、自分の計画を実行しようとしたとき、地に倒れ、御声を聞いたのであった。
御翼2011年8月号その2より

 
  
世界で活躍したクリスチャン HOME